Issue 2 September 2000 by Karine Michoud
ムラサキ貝は海の潮干帯の流れの激しい場所を生息地としています。生き延びるためには、岩に張り付く能力が必要です。彼らは、糸の束のようなものでできた「足糸(byssus)」と呼ばれる足場によって、水中で岩の表面にしっかりと接着しています。この糸の先は接着性のプラークで、耐水性の糊をふくんでおり、それがムラサキ貝を堅い表面へ錨をおろすことを可能にしています。
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この糸とプラークはいくつかのタンパク質、コラーゲン様のタンパク質と少なくとも4種類のムラサキ貝接着タンパク質(Mussel Adhesive Protein, MAP あるいは Foot protein, Fp)とで作られています。これらはすべてジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)1)や、その他のヒドロキシル化されたアミノ酸を含んでいます。このプラークはfp1,fp2,fp3を含みます。Fp1は10残基のデカペプチドの繰り返しからなり、ジヒドロキシプロリンを豊富に含みます。発現はプラークだけに限らず、糸の中のコラーゲンをカバーするキューティクルを形成にも使われます。この繰り返しのモチーフは種によって異なります。Fp2はプラークマトリックスの中でもシステインを豊富に含み、EGF様のタンデムリピートからなります。Fp3は繰り返しを含まない短いタンパク質ファミリーと関連していて、ヒドロキシアルギニンを含みます。Mytilus edulisでは少なくとも20種類のFp3が存在します。Fp3はそのタイプによって様々な構造を形成します。
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ムラサキ貝の接着タンパク質は、このようなヒドロキシされたアミノ酸が多く含まれるために耐水性となっているのでしょう。ジヒドロキシルベンゼン(カテコール)のヒドロキシル基は強力な水素結合を形成することが知られており、水分子による水和と拮抗します。さらに、接着力を強化するためには形成された水素結合を保持することが必要で、タンパク質同士の結合(クロスリンク)も伴っています。この過程はまだよく理解されていませんが、DOPAの存在と強く関係しているようです。
耐水性の強固な接着剤はとても魅力的です。医工学的な幅広い応用が考えられるからです。ポリフェノール性のタンパク質なら毒性がなく、生分解されますし、免疫反応も少ないので、医工学的な応用に適しているます。ムラサキ貝の接着性タンパク質は骨折した骨や腱や組織を補修するのに使えます。また、歯の隙間を埋めたり欠損した歯の補修にも使えるでしょう。外科手術においても、この「のり」を利用して縫い目をコーティングし、感染を防ぐことも可能でしょう。
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DOPAのFe3+やその他の金属への親和性も、ポリフェノール性のタンパク質がこれら金属などの素材への接着力を高めています。また、複層コーティングすることによって、海水による金属の腐食が抑えられるということも報告されています。
このように、医工学をはじめとしたバイオテクノロジー分野ではムラサキ貝の接着性は魅力的なのですが、海運業にとっては大きな問題です。ムラサキ貝は「からまり」(fouling)として知られており、船体の外層にムラサキ貝が接着し、さらのその間にさまざまな軟体動物が入り込んでしまうのです。からまりを防ぐ化学物質(antifouling compounds)もありますが、とても毒性が高く海洋を汚染してしまいます。ムラサキ貝Fpに対する生分解性の阻害剤ができれば、海運業という重要な産業セクターを守る新たな船首像となるでしょう。
接着タンパク質をはじめとするムラサキ貝の生成物を捕まえることは大きな課題です。たった1グラムのタンパク質を作るために数千のMytilus edulisが必要です!しかし、例外として、Aulacomya aterは他の種よりも15~20倍のタンパク質を生成します。解決方法の一つとしては、遺伝子工学を利用できます。最初は、バクテリアを発現系として使った試みが行われましたが、この遺伝子(産物)が外来物と認識されて排除され失敗に終わっています。しかし、1993年にMaughらが酵母でcDNAをクローニングして発現させました。そして現在、York大学のMcQueen-Masonらはタバコを使って遺伝子を発現させようとしています。
最後に、他の接着性タンパク質の例もあげておきましょう。ひとつは淡水性のムラサキ貝:Dreissena polymorphaやzebra musselで、これらは水道管などの配管や、水処理プラントの水路を詰まらせてしまいます。接着はDOPAを含むタンパク質が媒介するのですが、これらのタンパク質は他のムラサキ貝のFpとは異なります。また、フジツボはフジツボセメントと呼ばれるタンパク質性の分泌物を放出します。ただ、これにはDOPAが含まれていないので、接着のための戦略の進化は複数あると考えられます。
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